「今年に入ってから、バランスが取れなくて歩きにくい」という主訴の方がいらっしゃいました。
内科や、二軒の整形外科医院を受診しましたが、
「外反母趾が原因、インソール治療をするしかない」
と言われたり、
「わかりません、異常ありません」
と言われたそうです。
症状がよくならず、当院に来院したことのある知人の紹介で、OKはり灸マッサージに来院されました。
主訴を聞いたときから、「普通じゃないな」と思い、パーキンソン病を疑い、視診、触診。
関節他動検査をすると、上下肢ともに、「歯車現象」というパーキンソン病独特の所見ありました。
「これはパーキンソン病の疑い濃厚だ」と思い、その旨ご本人にお伝えしました。
ご本人も、医学的知識のある方で、「そうじゃないかと思っていた」とのこと。
ということで、治療はせずに、専門医の受診をすすめました。
後日、その方を紹介してくれた方が来院され、「あの人、やっぱり先生の言う通りパーキンソン病だった、早く見つけてもらって良かったと言っていた」と、ご報告いただいた。
この症例からわかることは、「病院・医院にかかっても、専門外の症状は見逃される場合がある」ということです。
鍼灸師は、どんな人が来院されるかわからないため、浅く広く病気の知識を習得している必要があります。
この方の場合、「関節他動検査」さえして、その「歯車現象」が、「パーキンソン病の疑いあり」とだけわかっていれば、もっと早く見つけることができたでしょう。
昨今、「医師が画像や数値ばかりを診て、患者さんの触診をしなくなった」と、よく言われます。
また、「専門化し過ぎて、専門外の病気の診断ができない」とも言われます。
今後、ますますこの傾向は強くなっていくでしょう。
たかが鍼灸師といえども、こういった初歩的な「除外診断」はできないと、患者さんの不利益になると、改めて、最低限の現代医学の習得に努める必要がある、と感じた症例でした。