免疫系は、神経系や内分泌系(ホルモン系)とともに、人間の身体の機能を一定に保つために働く重要な柱の一つです。
免疫系は、感染性微生物の活動や、その毒素に抵抗するという役割を担うため、その時に必要となる免疫活性を強める「正の方向」への作用が注目されがちですが、一旦、活性化された免疫応答が過剰反応となって人間の身体を傷害してしまうことも起こるため、「負の方向」への作用も同時に持ち合わせています。
このように、免疫系には、神経系や内分泌系(ホルモン系)と同じように、バランス調節機構が備わっています。
免疫系におけるバランス調節機構として重要なのは、「Th1細胞」と「Th2細胞」による免疫応答の調節です。
Th1細胞が活性化されると、IFN(インターフェロン)-ɤ、や、IL(インターロイキン)ー2、などに代表されるTh1サイトカイン(免疫系の細胞が細胞間情報伝達に用いている物質の総称)を活発に産生分泌して、細胞性免疫(異物を食べてしまう作用、異物細胞をやっつける作用)が誘導されます。
一方、Th2細胞が活性化されると、IL-4,IL-5、などに代表されるTh2サイトカインが活発に産生分泌されて、液性免疫(抗体を産生する作用)が活性化します。
この両者の関係の中で重要なことは、一方の細胞集団が分泌するサイトカインが他方の細胞集団の分化や機能を抑制して、Th1とTh2それぞれが誘導する細胞性免疫と液性免疫の応答の程度を一定の範囲内に収めようとする、まるでシーソーの動きのような相互抑制型のバランス調節が行われているということです。
しかし、何らかの原因で、この調節機構が破綻して、Th1またはTh2のどちらか一方の作用が突出しやすい体内環境が生まれると、抗原に対する免疫応答の方向が慢性的に偏ってしまうことがあります。
例えば、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、花粉症、などのアレルギー体質をもつ方の体内では、Th2がTh1よりも優位に分化して活性化しやすい環境が維持されていることで、日常の生活空間に存在する異物に対してIgE抗体が過剰に産生されてしまい、Ⅰ型(即時型)アレルギー反応が起こりやすくなっています。
鍼灸刺激、なかでも、特に、灸刺激は、この偏ったTh1/Th2バランスを正常化する作用があります。
ですので、鍼灸治療、特に、灸治療は、免疫系システムを調節する作用を発揮することにより、アレルギー症状に対し、効果をあげることができるのです。