人間の体において、軟部組織、と呼ばれる組織があります。
硬い骨に対する用語で、皮膚、筋肉、皮下脂肪などの皮下組織、靭帯、などの、やわらかい組織のことを意味しています。
この軟部組織には、例えば、筋肉と筋肉の間、例えば、筋肉と皮下脂肪の間、など、組織と組織の間で滑る動きが本来そなわっています。
この滑る動きを「滑走」といいます。
しかし、様々な原因によって、この軟部組織の「滑走性」の低下が生じます。
つまり、組織と組織の間の滑る動きが低下し、くっついたような状態になってしまうのです。
この軟部組織間の滑走性の低下は、筋肉が縮んで凝り固まった状態になり、関節の可動域の制限を生じさせたり、筋肉を発信源とした凝り痛み感覚(正確には、筋膜で感じます)を生じさせます。
このような滑走性低下は、いったん形成されてしまうと、トレーニングやストレッチでは、改善されません。
このような状態の時に、組織の間の滑走性を改善する作用に最も優れた治療法が、「はり治療」である、ということがいえます。
日々の臨床で、私や患者さんが、日々体験している、鍼治療によるこり痛み感の即効的な改善は、この組織の間の滑走性改善作用によるところが非常に大きいと考えられるのです。