鍼灸治療では、一旦与えた刺激をマイナスにしたり、リセットすることはできません。
体表から物理的刺激を与えて、体調を改善させようとする物理療法は、他の施術でも同じことが言えます。
ホームラン、ホールインワンを狙って、一発で超絶的に効けば最高です。しかし、そうした施術は一歩間違うと、刺激過多となり、かえって体調に悪影響を及ぼすことさえあります。
よくある代表的なものが、マッサージのもみかえし、はりあたり、灸あたり、などです。
経験を積んだ施術家ほど、こうしたことを経験しながら、刺激量に対して、非常に敏感になります。
受け止められる刺激量は一人一人違いますし、たとえ同一人物であっても、その時により、変化することもあります。
ですので、その時その時の自律神経機能の状態が如実に反映する「脈」を適宜チェックしながら、注意深く施術する必要があるのです。
ゴルフで言えば、グリーンオンが理想です、が、たとえそこまでいかなくても、細かく刻んで、カップの方向に向いて少しでも近づいていれば、とりあえずよしとします。
繰り返しになりますが、刺激は、プラスしていくことはできますが、一旦入れた刺激をなかったことにする、すなわち、マイナスすることはできないからです。
施術直後は最高でも、しばらく経過すると、ちとしんどくなった、ということは、恥ずかしながら未だに経験します。
どちらかといえば、私自信が、ホームランやホールインワンを狙いたがる傾向が昔からある施術者だからです。
ですので、ついもう少し、と、調子に乗って、患者さんの満足度を追及するあまり、やり過ぎてしまうことが、恥ずかしながら未だにあるのです。
それを重々承知していますので、自分で自分に「腹八分」と言い聞かせながら施術に当たっています。
たまに、「いつどこどこで一発で治った」とかおっしゃる患者さんがいらっしゃいますが、たまたま運が良かっただけで、その治療家が特段優れていたわけではない、と、心の中では思っています。
一番困るのは、結構な重症度が高い症状が、一発で治る、という過度な期待を抱いて来院される患者さんです。
私がこの世界に入って15年、そこでわかったことが、結果を急がず、ある程度腰を落ち着けて施術を継続される方が結局良くなっている、という事実です。
もちろん、治療家と患者さんとの「相性」とでもいうものは、やはりありますので、一回で、この先生ダメ、と判断されることは致し方ない面はありますし、どれだけ治療を継続しても一向に改善しない場合は、治療家を変えるべきでしょう。
ですが、この先生いいかも、と思われた場合、少なくとも3回は施術を継続されることをおすすめいたします。
3回くらいで、治療家も、患者さんも、両者が、このまま継続していいか悪いかだいたい察しがつきますので、
とりあえず3回
を、おすすめいたします。