パルペーション(触察・触診)は、スタティックパルペーション(静的触察・触診)とモーションパルペーション(動的触察・触診)に大きく分けられます。
従来、背骨を含む関節の硬さ(モビリティー)と、軟部組織(筋・筋膜・皮膚)の硬さを観たりアプローチするとき、それぞれ分けて考えたり観たりすることが一般的です。
しかし、身体全体は、皮膚に覆われていますので、皮膚の変位と骨の歪は大きく相関しています。 ですので、皮膚・筋膜の大まかな全体的な流れを観ることで、その人の関節機能障害がどのように身体全体に広がっているかもみることが可能です。
言うは易し行うは難し、で、これをマスターするのは、非常に多くの努力と持って生まれた感性を必要とします。 これを実際に自由自在に行えている施術家は、ごく少数でしょう。
観ようとしていないものはどれだけ経験を積んでも観れない、観ようと意識して日々に臨床に励み、努力を続ければ、必ず観れるようになる。
求めるものは与えられる。
私の現時点での触察力は、かなり感覚的になっていて、言葉では言い表せれないものの、身体全体を観る能力は近年格段に上達しています。
触察と施術が渾然一体となった、自分の理想とするアプローチもある程度はできています。
しかし、ここからまだ上を目指し、まだ今は治せないものを治せるようになるためには、もう一度、スタティックパルペーションとモーションパルペーションをそれぞれ個別に分解して、それぞれの力量を上げてなおかつ言葉にできるようにし、それをさらに言葉にできない感覚として落とし込んでいく作業が必要と、今、痛感しています。
具体的には、スタティックパルペーションをもう一度基本から綿密にしなおし、モーションパルペーションも基本から訓練しなおし、それぞれをマスターした段階で、スタティックパルペーションとモーションパルペーションを縦横無尽に臨機応変に使いこなせるようになる必要があります。
そして、最終的には、皮膚を受動的に触察しただけで、その人全体を理解できるようになる。 それが理想です。
実際の臨床は、時間的制約がありますので、短時間で高いレベルで観て施術できるようにならなければ実戦で使い物になりません。 そのための、準備として、空いた時間でできるだけパルペーション訓練を積む。
ギタリストが本番の演奏のために、スケール練習やコード理解などの基礎練習を日々するようなものです。
ギタリストとしては、コードとリードが渾然一体となったようなジャズ的な演奏をすることが理想ですので、施術においても、皮膚・筋膜・筋・骨関節まで、身体全体を流れるように縦横無尽に施術できるようになりたい。
手技と鍼灸の垣根もとっぱらって、手技も、鍼灸という道具を使用するときも、同じように一曲の曲を演奏するように、流れるように施術したい。 これが、事あるごとに口にする、自分の理想とする「総合格闘技的施術」です。
今の自分をしっかり観て、一歩一歩着実にレベルアップしていきます。 鍼灸をするようになって、指が硬くなるから、という理由で長い間断念していたギターを再開したのも、もはや指先だけに頼る施術でなくなってきているのと、ギターをプレイすることと施術することがお互いプラスになる、相乗的にいい影響を与え合う、と判断したからです。
理想は高く、現実はしっかり見据え、自分のできるかぎりの高み目指して、今日からまた人生をエンジョイしていきます。