全ての痛みは「神経痛」と考えると、様々な症状の整合性が取れることに気づきます。
例えば、一番身近な「肩こり」も、肩の筋肉が凝って痛みを出しているのではなく、肩に行く神経が伝達異常を起こした結果肩の筋肉が収縮して凝り固まってしまい、肩こり、という症状を起こす。
つまり、肩こりも神経の伝達異常から発生しているのであれば、神経が起こしている痛み、つまり、「神経痛」と考えることができるのです。
では、なぜ神経の伝達異常が起こるのか?
それは、神経の出所である、「背骨」が歪むからです。
では、なぜ背骨は歪むのか?
それは、背骨の土台の「仙骨」という骨盤の真ん中に位置する骨が歪むからです。
仙骨が歪むと、バランスを取るために背骨まで歪み、その結果、背骨から出る神経が伝達異常を起こし、身体のあちこちの痛みを発生させるのです。
では、なぜ仙骨は歪むのか?
仙骨は上半身と下半身をつなぐ唯一の骨です。
まさに、体の要、といえる場所です。
仙骨が、仙人の仙という尊い名前をつけられているのも、それほど大事な部位だからです。
ちなみに、英語では、「セイクラル」と言い、「神聖な」という意味です。
ところで、骨格はもちろんそれのみで存在しているわけではありません。
骨は、筋肉、のおかげで骨格を形成していられるのです。
仙骨の場合は、お尻の筋肉である、大殿筋や背骨を支える多裂筋・脊柱起立筋が支えています。
その筋肉が仙骨を正常な位置にあるように十分に働かないと、仙骨は歪んでしまうのです。
仙骨の歪みは、上半身にも下半身にも連鎖的に歪みを形成してゆきます。
その結果、神経の伝達異常があちこちで発生し、体中のあちこちが痛い、という人までいるのです。
では、なぜ、仙骨および背骨が歪むと神経の伝達異常が起こるのでしょうか?
通常の整形外科領域や整体領域のカイロプラクティックにおいても、「圧迫説」がとられます。
つまり、仙骨(仙骨からも脚に行く神経が出ています)や背骨の神経の出所(神経孔)で神経が「圧迫」されるために神経の伝達異常が起こり、その結果、神経痛が起こる、という考え方です。
しかし、実際は、この圧迫だけでは説明できない多くの症例に出会います。
この場合、逆に、神経が引っ張られるから神経伝達異常を起こす、つまり「牽引説」でないと説明がつかないのです。
整形外科領域で唯一、この牽引説が提唱されている病気が「胸郭出口症候群」です。
この病気の第一人者である、井手淳二先生が、この病気は、神経の圧迫だけでなく、牽引されて痛みを発生させる場合があり、胸郭出口症候群の80%以上は、圧迫と牽引が混在した、「混合型」である、とおっしゃっています。
この考え方を、胸郭出口症候群だけでなく、あらゆる痛みに拡げると、すべてのこり・痛み症状がなぜ発生するのか?が非常に上手く説明できるのです。
もう一度言いますが、いかにも神経痛という症状でなくても、あらゆる痛みは、神経の伝達異常からきている、いわば「神経痛」である、と考えると、全てが非常にしっくり来るのです。
ですので、たとえ、筋肉から来る痛みのように見えても、実際は、その筋肉を支配する神経が痛みを発生させている、と考えるのです。
私の尊敬する鍼灸師の一人である、故・長尾正人先生も、「筋肉が痛かろうが、関節が痛がろうが、皮膚が痛がろうが、内臓が痛かろうが、痛みを感じているのは、脳をはじめとした「神経」なんだから、「あらゆる痛みは神経痛である」、とおっしゃっていました。
ですので、仙骨・背骨だけでなく、脳から直接出る「脳神経」が関わる痛みや不快症状も、同様に考えます。
これまでの話の具体例としては、たとえば「膝痛」。
たとえ「変形性膝関節症」と診断されていても、骨や関節の変形=痛み、とは考えない、ということです。
膝に行く神経の出所である腰椎・仙骨の歪みがまずあって、そこが歪むことで、神経が圧迫もしくは牽引の力学的外力を受けることにより、膝に行く神経の伝達異常が発生し、膝に十分な血流が行かなくなり、関節滑液が不足し関節が痛む、もしくは、膝の行く神経が「神経痛」を起こすことで膝が痛いと感じる、ということです。
また、たとえば、耳鳴・難聴、といった脳神経が関わる症状も、土台である仙骨の歪みが頭蓋骨・頸椎を歪ませ、内耳神経が圧迫もしくは牽引されることで発生する、と考えるのです。
また、内臓機能を司る自律神経も同様に、仙骨を土台に、背骨、頭蓋骨が歪むことで、神経伝達異常を起こし、様々な内臓機能の症状や自律神経失調症状を引き起こす、と考えるのです。
こういった考え方をもとに考えれば、骨格バランスを整える、という施術が、結果的に、神経伝達異常を改善している、ということになる、ということに気づきます。
これは、絵空事ではなく、実際、「薬」、という、ある意味ごまかしの利くものに頼ることなく、「鍼灸・整体」、という手段のみで、様々な症状を持った患者さんを改善させなければならない我々のような治療家の血のにじむような毎日の真剣勝負の臨床経験から、そう考えざるを得ない、そうでなければ患者さんの不快症状を改善させることはできないし、また改善した時のメカニズムの説明がつかないのです。
ですので、来院される患者さんのあらゆる治療において、「神経を治療している」という概念を常に持ちながら治療することが必須である、と考えざるを得ないのです。
つまり、「神経伝達異常を改善させてあげることで症状を楽にしてさしあげる」という考え方が必要になるのです。
さて、では、根本の仙骨を歪ませないためには、何が必要でしょうか?
それは、「仙骨と腸骨との関節である仙腸関節の動きを正常化し、なおかつ仙骨を支える筋肉を鍛える」ことです。
すなわち、筋トレ、が必要となるのです。
腕のいい治療家の治療によって、辛い症状から一時的に解放されたとしても、仙骨を支える筋力がないから仙骨、そして背骨が歪む、そして、歪んだ仙骨、背骨から出る神経が伝達異常を起こし様々な症状を発生させる。
筋トレは、万人がやるべき運動なのです。
やらなければ、加齢とともに確実に筋力は低下します。
これは、最近筋トレを本格的に再開した私(院長)が一番実感していることです。
「こんなにも体を支える力が低下していたとは」が素直な実感です。
治療家による治療、という、いわば「他力」と、筋トレを自分で遂行する、という「自力」が組み合わさったとき、本当の「治る」が実現するのです。
ちなみに、筋トレは筋力をアップさせるだけでなく、神経のトレーニングにもなるのです。
筋トレをすることによって、神経の伝達を良くする効果も期待できるのです。
もちろん、これは、理想論であって、なかなか実現は難しい方もおられるし、きちんとした負荷や頻度でトレーニングしないと、かえって身体を歪ませる結果になることもあります。
しかし、筋力が低下すれば、いずれにせよ骨格は歪みます。
特に、たとえば介護といったような過酷な現場において、肩こり・腰痛の発生を予防するには、アスリート並みのトレーニングが必要となる計算になるくらい、体に負荷がかかります。
肉体労働で体を使っていても、その時は、無意識にできるだけ負荷を分散させて体を使いますので、トレーニングにはなりにくいのです。
やはり、体をきちんと支えられる筋力は、トレーニングによって培うしかないのです。
治療においても、ただ仙骨の位置を正せば、はいそれまでよ、と単純には行かないのが現実です。
患者さんの生きた人生そのものが身体の歪みとなって表現されている、という側面もあり、複雑にこんがらがった歪みを一つ一つ紐解いていく地道な作業が実際には必要となります。
そのためには、整体的観点からだけでなく、理学療法的観点、中医学的観点も利用しながら紐解いていかなければなりません。
このように、治療においても様々な臨床推論力とそれを実践する技術が必要ですし、さらに、本当に患者さんに良くなってもらおうと思うのであれば、治療と一緒にトレーニングの指導もしていくのが理想です。
現在、OKはり灸マッサージでは、トレーニングの指導はしておらず、専ら施術のみで対応させていただいておりますが、いずれ、トレーニングの処方も施術とは別にできるコースを作りたい、と考えています。
その前に、まずは、施術で大方の症状は改善できるところまでまだまだレベルアップしていく作業が必要です。
「どんな人も良くしたい」。
今後も、OKはり灸マッサージにご期待ください。