喘息に対する鍼灸治療としては、大きく二つに分けて考えます。
①喘息症状に対する治療
②喘息症状を悪化させる要因に対する治療
①喘息症状に対する治療
発作時に、発作を抑えるために鍼灸治療を施すことは、現代においては、本末転倒であり、発作時には、きちんと病院での治療を迅速に受けることが、何より大切なことです。
ここでいう、喘息症状に対する治療、とは、非発作期における治療のことであり、いかに良好な状態を維持するかを目標に置きます。
喘息の本質的な病態が、持続する気道炎症と、それによる気道粘膜上皮などの傷害による構造の変化(リモデリングといいます)であり、それに付随して、気道閉塞による気流制限と、気道過敏性の亢進、が起こっているわけでありますので、そこへ作用点を持っていくことによって、少しでも良好な状態が維持できることを目指します。
喘息症状に対する鍼灸治療の効果のメカニズムですが、
まずは、鍼灸刺激による感覚刺激が、脳脊髄への神経中枢へ伝わり、反射的に、自律神経に作用し、気管支を拡張させる、というメカニズムがあげられます(この治効メカニズムを、「体性ー自律神経反射」といい、鍼灸治療の基本的な治効メカニズムです)。
また、病態の本丸である、気道の慢性炎症自体への有効性も確認されており、自律神経を介して、または、直接的に、免疫系に作用することにより、気道の炎症を抑える作用がある、と考えられています。
特に、お灸が有効になる場面です。
いずれにしろ、具体的な施術方法としては、OKはり灸マッサージの基本スタイルである、鍼を浅く刺してすぐ抜く、もしくは、刺さずに皮膚に接触させて回旋させる、というスタイルと、灸点紙を使用した直接灸により、症状改善に有効な方向に、自律神経バランスと免疫バランスが調整されます(自律神経と免疫系は連動していることがわかっています)。
②喘息症状を悪化させる要因に対する治療
喘息患者さんは、咳や息切れを呈するばかりではなく、様々な随伴症状や別の病気を併せ持っていることが非常に多く、これが、おおいに喘息の悪化に影響を与えている場合が、非常に多くみられます。
その代表的な症状が、くび肩こり、です。
その他、不眠、不安、イライラ、疲れやすい、食欲不振、などが、喘息症状と連動しあいます。
ですので、これらの症状を鍼灸治療で緩和させることは、喘息の憎悪予防につながります。
また、喘息とアレルギー性鼻炎との間には、強い関連性がある、と考えられていて、
「ワンエアウェイ、ワンディジーズ」という概念が提唱されています(鼻から気管支までの一つながりの道での異常は、大きく見ると一つの病気である、という意味です)。
実際に、成人喘息患者の60~80%が鼻炎や鼻過敏性を有し、逆に、アレルギー性鼻炎患者の30~40%が喘息を合併している、といわれています。
ですので、鼻炎に対する治療も間接的に喘息のコントロールに有効と考えられますので、OKはり灸マッサージでも、非常に重要視しています。
以上のような考え方、やり方で、OKはり灸マッサージは、喘息患者様に対応させていただいております。
残念ながら、大人になってから発症した喘息は、治ることはありません。
ですので、治療としては、良好な、できるだけ症状のない状態を維持できるようにコントロールすることを目標に置くことになります。
近年の、吸入ステロイド薬を中心とした薬物療法の進歩により全く症状のない状態で生活することも可能になりました。
しかし、どんな病気もそうですが、いかに万全な対策をとっても、なかなか完全に症状のコントロールがしきれない喘息患者さんがいらっしゃることも、また事実です。
そういった患者さんに対し、定期的な鍼灸治療を継続することによって、より良好な状態を維持できることが可能である場合が多くあります。
ただし、喘息は、時に死に至ることもある病気ですので、その病態をきちんと理解し、慎重に対応し、あくまでも現代医学のサポート的治療、と位置付けて施術することが大切になります。
喘息をお持ちで、病院での治療で症状をなかなかコントロールしきれない方は、定期的な鍼灸治療を、信頼のおける治療院でお受けになられることをおすすめいたします。