骨盤は、下肢と脊柱を連結する位置にあり、荷重伝達機能を担います。
骨盤の可動性に関与するのは、左右の寛骨と仙骨の3つであり、これらを連結するため、左右の「仙腸関節」と「恥骨結合」が存在します。
各関節は、互いに独立して動くことはなく、骨盤輪内で3つの関節が連動します。
すなわち、一つの骨が、アライメント変化を起こすと、他の2つの骨も位置関係を変え、骨盤輪全体のアライメントに変化が生じます。
骨盤輪が、非対称アライメントを呈する場合、リングを構成する2つの寛骨と仙骨は、相互の位置変化を起こし、リング全体に歪みが生じます。
例えば、矢状面において、右寛骨が前傾すると、相対的に、左寛骨は後傾位となります。
この時、左の上後腸骨棘(PSIS)は後下方に、右PSISは前上方に移動します。
この時、骨盤を上から見ると、水平面では、右腸骨稜が前方に、左腸骨稜が後方に位置します。
さらに、これを後方から見ると、前額面において、左PSISは下方に、右PSISは上方に偏位します。
このような、非対称性アライメントを呈する骨盤において、仙骨は、上方からみて左回旋(仙骨前面が左向き)、後方からみて左に傾斜(尾骨が右に偏位)します。
このような骨盤アライメントは、骨盤内の安定性は保たれていますが、腰椎の土台となるべき仙骨の傾斜と回旋によって、腰椎アライメントおよび運動に、悪影響を及ぼします。
このような、非対称性アライメントパターンには、恥骨結合と、両側の仙腸関節の不安定性(過可動性)が問題になることがあります。
例えば、恥骨結合に、過大な可動性が存在する場合、非対称性アライメントにおいて、恥骨結合の上下の偏位が生じる可能性があります。
一方、左右の仙腸関節の可動性に、左右差が存在する場合は、どのような骨盤アライメントを呈する場合であっても、可動性の大きい側の仙腸関節が、相対的に不安定となりやすく
なります。
その状況下で、仙骨に伝達される大殿筋の収縮力や伸張性に、左右差が存在すると、仙骨の前額面上の傾斜が起こります。
このため、同じ非対称性アライメントパターンであっても、3関節の可動性の大小により、多様なアライメント異常が生じるのです。
そして、このような、骨盤マルアライメントが、ぎっくり腰、仙腸関節の痛み、鼠径部の痛み、腰痛、大腿部の鈍痛、などといった、多様な症状や症候を招くこととなるのです。