骨盤の運動は、体幹あるいは下肢のアライメントを変化させるだけではありません。
どちらか一方で生じたアライメントの変化は、骨盤を介して他方のアライメント変化を引き起こします。
例えば、骨盤の後傾と膝関節内側の痛みとは、骨盤の尾側方向への運動連鎖によって関連性があると考えることができます。
すなわち、腰椎の後弯によって骨盤が後傾し、骨盤からの運動連鎖を介して膝関節が内反し、内側コンパートメントの圧縮応力が増大する、という障害構造モデルが存在するのです。
このように、運動連鎖は、三次元的な運動の変換を引き起こし、ある体節の矢状面での運動が、別の体節の前額面における関節運動に影響を及ぼすという複雑な障害構造を構築します。
骨盤の空間上のアライメントの変化は、股関節と腰椎の運動の結果としておこるのです。
骨盤のアライメントを適正な状態にコントロールするためには、大腿ー骨盤ー腰椎に関わる筋群の協調した活動が必要になります。
立位や座位で頭部の位置を変えずに、骨盤の前傾と腰椎前弯を同時にコントロールするためには、多裂筋と腸腰筋の協調的な作用が必要となります。
骨盤を前傾させる主動作筋は腸腰筋です。
腸腰筋の腰椎に対する作用は、腰椎のアライメントによって変化します。
腰椎が屈曲位にある時に腸腰筋が活動すると、腰椎は屈曲を強めてしまいます。
したがって、骨盤の前傾と腰椎前弯を同時にコントロールするためには、多裂筋が収縮して腰椎を伸展させ、そのあと腸腰筋が活動して中間位になった腰椎を固定する必要があるのです。
これらの筋が矢状面上で腰椎運動をコントロールする上で、最も大事な協調筋となっているのです。