前回の続きです。
改めていろいろ調べてみました。
まず、最新の平成24年11月に行われた「国民健康・栄養調査」では、糖尿病が強く疑われる人が約950万人、糖尿病の可能性を否定できない人が約1100万人と合わせて2050万人で、前回の平成19年の2210万人から、初めて減少に転じたそうです。
この原因は何でしょうか?
一旦糖尿病を発症すると治ることはありませんので、なっていた人が死亡した数より、発症する人が少し減った、ということでしょうか?
ところで、昨日来院された方で、米農家の方がいらっしゃいました。
今、津山はちょうど田んぼを耕して水入れの時期で、これから忙しくなる、と言われていたとともに、「作っても赤字」といわれていました。
どの米農家の方も同様で、先祖から受け継いだ田んぼをほおっておくわけにはいかないから、えらい目をして赤字とわかっていてもするしかない、とのことでした。
どうしてそういう状況になっているのか問うと、皆が米を食べなくなったからだ、とのことでした。
ここで、また私はハッとしました。
求める者には与えられる、ではありませんが、ここ一週間ほど、なぜ糖尿病は増え続けるのか?を考えていた私は、「これだ!」と思いました。
そして、もう一度、いろいろ調べてみたのです。
まず、米の消費量は、昭和37年の120kg(一人一年あたり)をピークに減少しつづけ、平成18年には60kgと半減しています。
炭水化物自体の摂取量はそこまで減少してはいませんので、結果、パンや麺類などの小麦食品の摂取量が増えた、と予想されます。
食塩と砂糖ともに、これも減少しつづけていますが、砂糖については、清涼飲料水の普及などにより、単純に減少しているとは言えないのではないかと考えます。
改めて、脂質について調べると、たしかに非常に増加していて、1965年の16.2%から平成21年の28.4%という増加になっていて、さらに、脂質を30%以上の割合で摂取する人は、男性で20%、女性で28%と、確実に脂質摂取量は増えているようです。
野菜摂取量は、年々減少しており、牛乳・乳製品の摂取量は増加しています。
あと、朝食を抜いている人も増加していて、男性の14%、女性の10%、だそうです。
これは、夕食の開始時間が遅くなっていて、しかもドカ食いするため、次の日の朝起きてもお腹が減っていないのと、ぎりぎりまで寝ていて朝食を摂る時間が確保できない、ということがあるようです。
以上から推察されるのは、やはり食生活の変化と生活習慣の変化が糖尿病の増加に関係していると考えざるを得ない、ということです。
この事実から言えることは、いくら治療が進歩しても、一旦発症すれば治らないのですから、いかに発症前の予防が大事であるか、ということです。
こうなると、すでに医学の範疇を超えた問題になっていて、生活習慣、という、日常の過し方、という個人の思想・行動様式の問題となっていることがわかります。
糖尿病で、目が見えなくなった人、足を切断した人、透析されている人、脳梗塞で半身不随になり車いす生活を余儀なくされている人、多くの大変な状況を観てきましたが、一般の方には、糖尿病がいかに怖い病気であるか、を国をあげて啓発していく必要がある、と思わせられます。
糖尿病専門医の方のご努力だけではどうにもならない、もっと大きな問題が横たわっている、と改めて認識いたしました。