汗はアトピー性皮膚炎の代表的な悪化因子として知られています。
が、アトピー性皮膚炎の患者さんにおいて、汗そのものが悪化因子ではないことがわかってきています。
アトピー性皮膚炎の患者さんでは、汗の成分に異常があるといわれており、抗菌作用のあるペプチド含有量が減少しており、汗の持つ自然免疫能が発揮されていないことが指摘されています。
また、アトピー性皮膚炎の患者さんでは、発汗自体の異常な低下があることもわかっています。
発汗低下のメカニズムとして、汗がつくられても汗孔が閉塞してしまい発汗しない、汗そのものの産生・分泌が低下している、汗が体表に出る前に汗管から汗管外に漏出してしまう、などがあげられます。
また、汗腺は自律神経の作用によって汗を作り出していますが、自律神経機能異常により、発汗低下が起こるメカニズムも指摘されています。
アレルギー炎症も発汗を抑制しますが、ここにヒスタミンが、大きく関わっています。
抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンが関与する発汗低下を改善します。
アトピー性皮膚炎の患者さんの汗対策としては、まず、アレルギー炎症を緩和することで、損なわれた発汗機能を改善させ、徐々に発汗を促すことで皮膚を良い状態に維持することが重要です。
しかし、ただ単に汗をかけばよいのではなく、運動などで大量に出る汗は、不汗蒸発の汗とは異なり、pHが高めで、比較的塩分を多く含むので、皮膚への刺激や皮膚の細菌叢の変調を防ぐために、大量に汗をかいた時には、すぐに汗をふきとるなどの対策が必要となります。
放出された汗は角質を潤すため、汗をかくことで、アトピー性皮膚炎の乾燥状態を改善できる可能性があります。
事実、健常者では、発汗量と皮膚の角質水分量は正の相関関係を示します。
ところが、アトピー性皮膚炎の患者さんでは、発汗が皮膚の潤いに反映されにくいという特徴があります。
これは、アトピー性皮膚炎の角層は、保水機能が損なわれているため、と考えられます。
汗をかいた効果を高めるためには、角層の保水機能の向上を改善するために、日頃からのスキンケアが重要となります。