アトピー性皮膚炎は、アレルギー的機序のみで起こる疾患ではない、とはいっても、やはり、アレルギー疾患の一つであることは間違いありません。
アレルギー疾患とは、アレルギー反応が原因で起こる病気です。
アレルギー反応は、一言でいうと、免疫応答の過剰です。
免疫反応の主役は、白血球です。
白血球は、マクロファージ、リンパ球、顆粒球、の3種類に分かれます。
マクロファージは、異物を退治すると同時に、その情報をリンパ球に伝えます。
リンパ球は、免疫システムの主役であり、T細胞とB細胞の2種類があります。
T細胞は、さらに、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、サプレッサーT細胞に分かれます。
このT細胞なしには免疫システムは成り立ちません。
顆粒球は、好酸球、好塩基球、好中球、の3種類があります。
顆粒球も、異物を撃退するために働きますが、そのうち、好酸球、好塩基球がアレルギー反応を引き起こしたり、増強したりします。
全体の35%がリンパ球、60%が顆粒球、5%がマクロファージというのが、平均的な割合です。
これら、リンパ球と顆粒球の比率は、自律神経機能と連動しています。
交感神経が優位になると顆粒球比率が、副交感神経が優位になるとリンパ球比率が増えます。
この、免疫機能と自律神経機能が連動していることは、アトピー性皮膚炎の治療にとって、非常に大きな意味を持ちます。
アレルギー体質の人では、IgEという抗体の産生が過剰になっています。
これが、白血球の一種である肥満細胞の表面に付着し、抗原と反応すると、肥満細胞から次々とヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されて組織障害を引き起こします。
アレルギーには、Ⅰ型からⅣ型まで4つの型があり、一般的なアレルギー疾患のほとんどは、Ⅰ型です。
アトピー性皮膚炎では、IgE抗体が高率に検出され、病変部にはリンパ球が多数みられます。
湿疹反応自体はⅣ型とされていますが、IgE抗体はⅠ型で、リンパ球はⅣ型で大きく関与することから、アトピー性皮膚炎はⅠ型とⅣ型の混合型といわれます。
アトピー性皮膚炎のアレルギー反応には、T細胞が関与しています。
T細胞は、CD4陽性Thと、CD8陽性細胞障害性T細胞に大きく分類されます。
CD4陽性Thは、IFN(インターフェロン)-ɤを産生するTh1と、IL(インターロイキン)-4、5、13を産生し、IgEを介するⅠ型アレルギーの形成に関与するTh2に分類されます。
Ⅰ型アレルギーでは、では、このTh1とTh2のバランスがくずれています。
Ⅰ型アレルギーでは、Th1細胞に比べてTh2細胞が不均衡に強く作用しており、IgE抗体の過剰な産生につながっています。
アトピー性皮膚炎においても、このTh2優位なTリンパ球バランスになっており、これがアレルギー反応を引き起こしやすい環境をつくっています。
また、好酸球も血中、病変部ともに増えています。
これまで、現代西洋医学のミクロな視点から、アトピー性皮膚炎を見てきました。
ところで、アトピー性皮膚炎は、昭和30年代頃までは、大人になるにつれて自然に治る病気でした。
ところが、時代が進むにつれ、大人のアトピー性皮膚炎患者が増加し続け、もはや、大人になれば治るという病気ではなくなってきています。
これは、近年注目されている「フィラグリン遺伝子の変異」がアトピー性皮膚炎の真の原因であることと矛盾しています。
アトピー性皮膚炎が遺伝性疾患であるならば、ここまで有病率が変化するのはおかしいからです。
アトピー性皮膚炎のバリア機能の低下は、結果であって原因ではない、という考えも、未だに根強いものがあります。
次回からは、やや視点を拡げて、よりマクロな視点から、アトピー性皮膚炎という疾患をみていきたいと考えています。