アトピー性皮膚炎のかゆみは、抗ヒスタミン薬が効きにくいかゆみであることが知られています。
健常者の皮膚においては、知覚神経のC線維は主に表皮ー真皮境界部や真皮内に分布しています。
一方、アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚では、多くのC線維が表皮内に侵入し、それらのなかには角質層直下にまで伸長する神経線維も存在します。
表皮内神経線維が増生した皮膚では、かゆみ過敏を引き起こします。
これが、アトピー性皮膚炎の患者さんでは、かゆみ過敏があり、そのかゆみは抗ヒスタミン薬が効きにくい理由です。
こういった神経線維の表皮への伸長が発生するメカニズムは、健常者では、表皮において、神経反発因子である「Sema3A」が高発現し、神経成長因子である「NGF」の低発現し、神経線維が表皮内に侵入できないようになっているのですが、アトピー性皮膚炎の患者さんの表皮では、この2者のバランスが逆転してしまっているせいで、神経線維が表皮内に侵入・増生しやすくなっているのです。
表皮内神経線維によるかゆみ過敏は、皮膚バリアが脆弱していることを知らせるサインです。
皮膚が乾燥したらすぐに保湿剤を外用し、皮膚バリア機能を保護・維持すること、さらには皮膚乾燥が起こる前から保湿剤によるスキンケアを行うことで、表皮内神経線維の増生を抑制し、かゆみ過敏を予防することが重要になります。
アトピー性皮膚炎の治療においては、まずかゆみを止めることが最優先であり、その後、皮膚バリア機能を修復・保護することが大切になります。