投球障害肩を罹患した選手の多くが、投球のコッキング期から加速期に痛みを訴え、発症すると、投球パフォーマンスは低下します。
近年、投球障害肩の病態は非常に多く報告されていますが、比較的コンセンサスが得られている病態は、「エクスターナルインピンジメント」と「インターナルインピンジメント」です。
そして、その背景には、肩関節の微小不安定性がある、と考えられています。
48名の無症候の大学野球選手の投球肩を対象に、MRIで検討した結果では、無症候にもかかわらず、半数以上の選手の上腕骨頭に異常所見を認めた、とのことです。
その後の追跡調査では、上腕骨頭に異常所見を認めた選手は、認めなかった選手と比較して、有意に投球障害肩の発症率が高かった、とのことです。
このことから、上腕骨頭の異常所見は、投球障害肩発症の危険因子である、と考えられ、これは、肩関節内のインピンジメントの影響によるものと推察されます。
ということは、肩関節内のインピンジメントを防止する投球動作が、投球障害肩の発症を予防する動作、ということが結論付けられます。
このためには、上腕骨頭と関節窩、上腕骨頭と肩峰下との接触をできるだけ減らすことが求められます。
これを実現する、理想的なフォームの追及、というものは、個人個人異なる個性を殺すことになるか?という疑問も湧きます。
しかし、実際に、トップレベルのプロ野球選手の投球フォームには、それぞれの個性を超越した、ある共通したものがあることも事実
です。
やはり、スピードとコントロールを両立させ、かつ、投球障害肩を発症しにくい投球フォームを身に着けることが、トップレベルに行くためには必要となるでしょう。
そのためには、それを実現する身体的条件が必須になります。
言うは易く行うは難し、で、これを実現できるごく一部の選手が「プロ」という世界で活躍できるのでしょう。
それはともかく、投球障害肩を発症しにくく、かつ、高度なパフォーマンスを追及するのであれば、やはり、怪我をしないプロ野球選手のフォームを参考にするのが、一つの方法かと思われます。
そして、その選手が、普段どんなコンディショニングをしているか?どんな肉体的基礎能力を有しているか?を知ることが、上を目指す人には大切なこととなるでしょう。
さらに、ごく基本的な事実として、トップレベルのアスリートは、皆、姿勢・立ち居振る舞いが綺麗である、ということも重要なことである、と考えています。
少年野球に一生懸命に取り組んではいるものの、練習以外では不良姿勢でスマホゲームばかりしてしまう、では、自ずと限界が想定できる、ということです。
私(院長)は、スポーツ傷害を発症させない極基本的な第一歩は、日々の姿勢・立ち居振る舞いに気を付ける、というところから始まる、ということを信じて疑わない者なのです。