感冒後嗅覚障害は、上気道のウイルス感染後、上気道炎症状が消失した後も嗅覚障害が持続する状態です。
嗅覚障害を引き起こす病因の中では、慢性副鼻腔炎に次いで、二番目に多く、中高年の女性に多いのが特徴です。
感冒後嗅覚障害は、ウイルスによって嗅上皮自体が障害を受けることで引き起こされると考えています。
感冒後嗅覚障害は、改善までの期間が数年にわたることもあり、少なくとも数年は経過観察すべき病態と考えられています。
嗅神経は、成熟後も変性と新生を繰り返すとともに、傷害を受けた後も再生する特異な神経細胞です。
ということは、嗅神経の再生を促すことにより、嗅覚障害を改善に導くことが可能であるということです。
嗅神経の再生、維持には、神経成長因子(NGF)が関与しています。
感冒後嗅覚障害は、嗅神経の変性による障害と考えられていますので、このNGFの作用が期待できる嗅覚障害です。
漢方薬の、「当帰芍薬散」が嗅覚障害において嗅神経のNGF活性を亢進させることが判明しています。
感冒後嗅覚障害は、簡単に短期間での改善が見込めないとしても、数年単位での改善が見込める疾患ですので、漢方薬や鍼灸治療をすることは、嗅神経のNGF活性亢進作用を強め、改善する可能性のある疾患である、ということが言えるのです。