現代整形外科学領域の第一線の先生方によって、一昔前までは(中には今でも)常識と思われていた事柄が、実はそうではないということが示された事例がいくつかあります。
その事例の一つを示しますと、
「椎間板ヘルニアがあっても腰痛が起きるとは限らない。」
「成人の76%に椎間板ヘルニアが見られるが、腰痛が起きる人はその中のごく一部。」
「椎間板ヘルニアの90%は何の治療をしなくても自然に治る」
この事例が示しているのは、いまだに何となく腰痛の原因というとみなさん椎間板ヘルニアが一番多いだろうと思っている風潮があると思われますが、実際は、椎間板ヘルニアによって起こる腰痛はそれほど多くはないということです。
実際、私が鍼灸マッサージ師になってからの10年間あまりの臨床で、腰痛で治療を受けられる患者さんの中に、
「ヘルニアを持ってるんです」
という方が、けっこうな割合でおられますが、だから腰が痛いのだというには何の根拠もないということです。
さらにいえば、たとえ大きなヘルニアがMRIなどで確認できて、手術しなければ治らないと思われている場合でも、実際は、椎間板ヘルニアの約90%は自然に治ってしまうことも、かなり以前からわかっていることです。
この事実は、例えば、病院で椎間板ヘルニアといわれ手術をすすめられているところを、鍼をして症状が改善し、手術を回避できたとしても、それが鍼をしたおかげとは言えない、ということです。
なんせ、90%は自然に治るのですから。
(椎間板ヘルニアの治療に鍼灸治療が無効であるといっているわけではありません。現時点では鍼が効いたと証明することはできない、ということです。腰痛に対する鍼灸治療の有効性については何回か後にまとめて記します。)
椎間板ヘルニアは、椎間板の軟骨が壊れ、軟骨の中にあるゼリー状の「髄核」という部分が神経の方に向かって出てきて、機械的に神経が圧迫されるために痛みが起こる、というのが一昔前の説明でしたが、実は、飛び出した髄核そのものに、神経に炎症を起こす作用があることがわかってきました。
つまり、ヘルニアの痛みは、単なる物理的圧迫だけによるものではなく、炎症によって起こるものだったのです。
ですので、神経の炎症が治まれば、ヘルニアがあっても痛みは治まるのです。
椎間板ヘルニアは、病名自体がすでに日本では、非常にポピュラーで、一般の人にまでなじんでいて、
「ヘルニア=腰痛」
と受け取っている人も多いと思われるのですが、実際には、ヘルニアになっても腰痛はほとんど起きないのです。
成人の76%にヘルニアがみつかりますが、(76%といえば、大抵の大人はヘルニアがあると考えられるわけです。)ヘルニアがあっても76%の人たちは全く痛みを感じていないのです。
では、椎間板ヘルニアの手術をしなければならない人と、ヘルニアがあっても全然痛くない人の違いは何か?といえば、三つの因子が関係している、と言われています。
1.神経を圧迫している強さが強いか弱いかの違い
2.仕事をしていくうえでの満足度の違い
①収入に満足しているか?
②職場環境に満足しているか?
③仕事内容に満足しているか?
④同僚との関係に満足しているか?
の4点がポイントといわれています。
3.心理的な要因
うつ、不安、ストレス、など
要は、X線画像上でヘルニアがあっても症状が全く出ない人と、手術をしなければならないほどひどく痛む人の違いは、心理・社会的な因子があるかないかが大きいということがいえるのです。
心理・社会的な因子のない人は「下行性疼痛抑制系」がうまく機能しているので、ヘルニアがあっても痛いと感じにくくなります。
一方、ストレス、うつ、不安、などに長期間さらされると、「下行性疼痛抑制系」の働きが落ちてしまうため、ヘルニアがちょっと出ただけでも、強い痛みとして感じることになってしまうのです。
このような理由で、ヘルニアを持っていても、痛みを訴える人と痛みを訴えない人が出てくるのです。
結局、実際に腰痛の原因としてヘルニアが関係しているケースは2~3%程度にすぎず、椎間板ヘルニアについては、ほぼ腰痛の原因ではない、と考えられます。
それよりも、ずっと多くの割合で、社会生活や心理的な原因が腰痛の慢性化に関係している、と考えられるようになってきているのです。
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