鍼灸治療では、主に足りないエネルギーを充足させる「補法(ほほう)」と、余分なエネルギーを抜いてやる「瀉法(しゃほう)」の2種類がある、といわれています。
日本の鍼灸治療では、主に「補法」が重視されます。
しかし、人間の心身は複雑で、単純に「補法」さえすればいい状況というのは、ほとんどない、と私は考えています。
人間が不調を訴える時、確かに、エネルギーが不足して不調を訴える場合は多いですが、人間の心身はそんなに単純なものではないため、エネルギーの偏在が起こり、エネルギーがどこかで不足した場合、どこかで余分なエネルギーが滞っている状態が一人の人間の中で同時に起こっていることがほとんどです。
とくに、凝り痛みなどの、はっきりしたしんどい自覚症状がある場合、その自覚部位では、ほとんどの場合、余分なエネルギーが滞っている状態となっています。
ですので、そういう場合は、余分なエネルギーを取り去ってやる「瀉法」が必要になります。
そうすることで、患者さんは、スッキリ爽快感を味わい、同時に、しんどかった凝り痛みの症状も緩和されます。
この状況で、誤って「補法」を施すと、凝り痛みなどのしんどい感じは、かえって悪化します。
最近、改めて、「瀉法」の重要性に気づかされる機会が、不本意ながらありました。
「補法」と「瀉法」が絶妙に施せたときは、患者さんは、本当にどんどん良くなります。
鍼灸治療は、このように、「補法」と「瀉法」を絶妙に使い分ける必要がある、非常に繊細な作業ですが、今後も、より一層精進し、患者さん満足度を常にあげていく努力を怠らないようにしたいと考えています。