腱板断裂は、腱板の退行変性を基盤として、中高年に好発し、肩の痛みや機能障害につながる代表的な疾患です。
腱板断裂は、明確な外傷がなく、加齢に伴う変性が主因と考えられる断裂、オーバーユースに起因した断裂、などの、「非外傷性腱板断裂」と、転倒や交通事故、コンタクトスポーツによる受傷など、明らかな外傷により発症する、「外傷性腱板断裂」に大別できます。
腱板断裂は、その形態により、肩関節腔と肩峰下滑液包が交通している、「完全断裂」と、肩関節腔と肩峰下滑液包が交通していない、「不全断裂(部分断裂)」に大別でき、不全断裂は、断裂部位により、「滑液包面断裂」、「腱内断裂」、「関節包面断裂」の三つに分類されます。
腱板断裂は、その多くが、加齢による腱板組織の変性がベースとなって発症し、断裂していても何の症状もない「無症候性断裂」も多く存在することもわかっています。
この腱板組織の退行変性には、コラーゲン合成能の低下が関与していると考えられています。
腱の変性や血行不全などの内的要因に加えて、上腕骨大結節部や棘上筋腱付着部が、肩峰前外側に衝突(インピンジメント)することで発症する腱板断裂と、加齢とともに変性し、伸張性が低下した腱板自体に伸張ストレスが反復して微細損傷が発生し、徐々に断裂サイズが拡大する腱板断裂の、両者が複合し、高齢者の腱板断裂は起こる、と考えられています。
転倒などの外力が要因で起こる、外傷性の腱板断裂も、退行変性により腱板の脆弱性が進んだ状態で外傷が加わることで、容易に発症する、と考えられます。