末梢神経の構造は、わずかに伸びるばねのような構造をしています。
末梢神経には、遊びがあるので、手足が動いても神経が追従してスムーズに動くようになっています(末梢神経の滑走性)。
人間の体は、四肢の動きに追従して、神経が受動的に滑走することで、機能が保たれているのです。
この、末梢神経の滑走性障害があると、手足が動く際、末梢神経にテンションがかかり、動作制限、柔軟性の欠如、痛み、を引き起こします。
つまり、身体が硬くて、手足を伸ばすと制限があり、痛む、場合、筋肉の伸張性や筋肉の硬さだけが原因ではなく、末梢神経の滑走性の障害がある場合がある、ということです。
たとえば、野球選手のピッチングフォームが崩れる一つの原因は、末梢神経の滑走性障害が原因かもしれません。
腕神経叢は、鎖骨の下を通っているため、鎖骨や肩甲骨が下がると引っ張られます。
もし、尺骨神経の滑走性に問題があれば、引っ張られて痛みが出ないように、肩甲骨を挙上したフォームにしてしまうなど、末梢神経の滑走性障害が動作の制限につながることもあるのです。
このように、動作の障害、柔軟性の欠如、の原因になるのは、筋の伸張性の欠如や筋の硬さだけが問題ではなく、神経の滑走性、に問題がある場合が少なくないのです。
この現象は、臨床的に見ても、非常に多く、一見、筋の痛み、関節の痛み、に見える症状も、実は神経の滑走性からくる問題、である場合と想定されるケースは、少なくないのです。
施術において、この、神経の滑走性障害、という概念を常に意識しながら施術することは、非常に有効な場合が多いのです。
特に、この、神経の滑走性障害、に対する強力な武器として、「鍼(はり)」があります。
私(院長)の日々の臨床からも、鍼により、筋・筋膜が緩むのはもちろん、神経の滑走性も同時に得られることによって、症状が改善していると思われる症例は、実はひじょうに多いのです。
このように、神経の滑走性障害、という概念を知ることは、臨床能力を非常にアップさせます。
こり・痛み症状を診る場合、もしくは、それ以外の症状でも、1:骨・関節、2:筋・筋膜、そして、3:神経、をトータル的に診るようにすると、症状の原因が見えてくることが非常に多い、と、感じています。