腱板断裂によって高頻度に肩関節痛が生じるように思われていますが、実際は、自覚のない腱板断裂(無症候性腱板断裂)の頻度も高く、腱板断裂と痛みの関係は未だに解明されていません。
更に、腱板断裂によって高頻度に上肢の挙上困難が生じるように思われていますが、これも実際には、急性期と広範囲腱板断裂にしか生じないことがわかっています。
腱板断裂は棘上筋に起こることが多く、受傷直後は上肢の挙上が困難となりますが、炎症症状が消失し代償運動を獲得すると上肢の挙上は可能となります。
更には、肩甲下筋、棘下筋および小円筋によるフォースカップルが維持されている間は、大断裂でも挙上が可能です。
肩に症状のない成人を対象にしたMRIの調査では、60歳以上の54%に腱板断裂が存在した、という報告もあります。
このことは、肩が痛くて腕が挙がらない、という場合、MRIで腱板断裂が見つかったとしても、必ずしも全ての痛みや機能障害の原因が腱板断裂のせいとは言い切れない、ということを意味します。
臨床の場において、腱板断裂が疑わしい症例に出くわすことも少なくありません。
OKはり灸マッサージでは、腱板断裂が疑わしい場合、基本的に患者さんにそのことをお伝えし、肩に詳しい医療機関(兵庫県か岡山市)へ紹介するかどうか、手術を選択するかどうか、をご本人にお任せするスタイルをとってきました。
ですが、上記のようなエビデンスがあることがわかってからは、たとえ腱板断裂が疑わしい場合であっても、日常生活で問題ないレベルにまで回復すれば満足される方であればできるかぎり治療を継続させていただき、アスリートやお仕事でどうしても上肢を酷使しなければならない場合に肩に詳しい医療機関への紹介を検討する、というように臨機応変に対応させていただくようにしました。
腱板断裂が疑わしい場合でも、OKはり灸マッサージの治療で、ある程度の痛みの軽減、可動域の改善、上肢挙上運動の実現は達成できていますので、患者さんに「腱が傷んで切れているかもしれない」ということはお伝えした上で、患者さんに選択していただき、治療を継続するならする、肩に詳しい医療機関への紹介を希望されるなら紹介させていただくようにしております。