首のこり・痛みを主訴として来院される患者さんは多いですが、そういった方は首の症状のほかに、頭痛・めまい・手のしびれ・などの症状をはじめ、体のだるさ・やる気が出ない、など、自律神経失調的な症状を併せ持っていることが非常に多いです。
首には、多くの大事な神経・血管が集まっているため、このような問題が起こると考えられます。
すでに、医療機関で、「頸椎ヘルニア」「ストレートネック」などの診断を受けている方も多く、だからといって医療機関ではこれといった対応策がないため、当院のような治療院を訪れることとなります。
首の症状を訴える方は、通常の肩こりを訴える患者さんよりも、はっきり言って「重症」といえます。(肩こりにも、もちろん頸椎など首の問題が関係してはいますが)
むち打ちなどの外傷を除くと、その症状の大部分の原因は、ズバリ、その方のそれまでの日常生活にあります。
また、むち打ちなどの外傷においてさえ、その方の、それまでの日常生活からきている首の状態の良し悪しが、その後の症状や治りやすさの軽重にかかわっています。
症状の原因が日常生活にあるのであれば、症状軽減のためには、治療を受けるだけでなく、自らが日常生活を顧みる必要がある、ということです。
首に症状がある方は、まず、日常生活において首が正しい位置に置かれていません。そうなると首に過度な負担がかかり、症状が出ることになります。
首を正しい位置に保つためには、筋力と柔軟性が必要です。
治療院では、この低下した柔軟性を出すことに治療の主眼が置かれることとなります。
低下した筋力については、患者さん自身が日常生活では姿勢に気を付けるとともに、低下した筋力をアップさせる努力を、患者さん自身が行う必要があります。
ただし、治療で首の柔軟性を出すことで、自然に低下していた筋力がアップした状態となり(正確には、首の神経‐筋機能が促通され、低下していた筋機能がアップしたような状態になる)ことで、自然に首を正しい位置に保ちやすくなり、特に自助努力することなしに症状が軽減される方もいらっしゃいます。
一方、治療したときはまあまあ良くなるが、すぐに症状がもどってしまう、という方もおられます。
この違いは、私の個人的経験から判断させていただくと、一言でいうと、「全身が硬い」方がすぐに症状が戻ってしまう傾向にあると考えています。
もっといえば、首だけでなく背骨全体が硬いのです。
それに連動して、股関節、肩甲骨の動きがかなり制限されていることが多いです。
首の症状は、首だけでなく、直近では、「腰」の柔軟性の低下と密接に関わっていて、腰椎ー骨盤ー股関節連動の不具合、また、それにともなう、頭蓋骨ー頸椎‐肩甲骨連動の不具合が影響していることが非常に多いのです。
つまり、「全身が硬い」状態である場合が、症状がすぐ戻ってしまう人の特徴なのです。
そういった方では、いわゆる体幹機能も低下しています。
腹圧が十分にかけられないため腰椎・頸椎が支えられない、という構図もあるのです。
胸椎および、胸郭の柔軟性低下も、また多く関係してきます。
頸椎局所では、首の前の深部筋である頚長筋が弱っていることが多いです。
これらの問題から、頸椎自体に関節機能障害が発生している場合も多く、いわゆるフィクセーション(関節の動きが関節運動学的に低下した状態)が発生しています。
治療としては、これらの多くの問題を考慮しながら、全身的にアプローチしていくこととなります。
先にも申しましたが、少なくとも「首」と「腰」は、必ずワンセットで診る必要があります。
腰を診る場合、必然的に骨盤、股関節も連動させながら診ます。
このように、症状は首でも、結局全身を診ていく必要があるのです。
ただし、治療だけで症状改善が成功する場合とそうでない場合がどうしてもでてきます。
これは、「首」に限らず、どのような症状にでも言えることですが、とくに首では自助努力の比重が大きくならざるを得ない場合が多いのです。
首を正しい位置に置くように常に意識し、全身が硬い人はストレッチなどで全身の柔軟性を出すようにし、弱った筋力を補強するために筋肉に刺激を入れる努力を継続する。
このように、首のこり・痛みを少しでも軽くするには、治療と自助努力の併用がどうしても必要になる場合があります。
当院は治療院ですので、基本的に治療を施します。
時間的な制約で、自己コンディショニングの仕方を、懇切丁寧に説明する時間を持てないことが多いところが欠点です。
私個人的には、治療はもちろんですが、自己コンディショニングにも非常に興味がありますし、自分自身日々実践しなくてはならないと考え、できるだけ自己コンディショニングを実践するようにしています。理学療法士やスポーツトレーナーに負けないくらいのコンディショニングやトレーニングの知識を身に着けようと日々努力しています。
将来的には、治療だけでなく、自助努力のモチベーションの高い人に自己コンディショニングやトレーニングも指導できる時間と環境を有したOKを目指してまいります。