極端に強い痛みを持った人、自律神経系の機能が崩れている人、の背中を診ると、ほぼ必ず左右のアンバランスがあります(ぱっと見てわかるくらいに極端な場合が多いです)。
これらの人は、病院その他の治療が無効です(だからOKはり灸マッサージにご来院されるわけですが)。
この背中の左右差は、単に脊柱起立筋の緊張の左右差というよりも、胸郭とその大黒柱である胸椎とその下の腰椎の回旋の固定化が原因です。
その背中の左右差を整える施術を行い、左右差が軽減するに連れて、不快症状も軽減します。
このメカニズムは、胸椎と腰椎の回旋の固定化により、そこの両側を通る交感神経の緊張に左右差が生まれ、それが交感神経機能の左右差、アンバランスを生み、不快症状の原因となっていると考えられます。
痛みと交感神経には密接な関係がありますので、交感神経機能が不調をきたすと、痛みが強くなり、なおかつ慢性化します。
これらが、背中の左右差を整えることで解消され、不快症状が軽減する、と考えられます。
なお、背中には、背部兪穴といって、非常に重要なツボが上から下まで並んでいます。
背中の左右差を整える施術=背部兪穴の左右差を整える施術、ということができます。
この背部兪穴の左右差を整える時、背中局所だけでなく、上下肢も使います。
例えば、右肝兪というツボが左に比べ緊張が強い時、右肝経という経絡上の下肢のツボと、それに関連する上肢の経絡上のツボを使います(上肢の経絡は、その時々で使う経絡が異なります。鍼灸医学独自の理論があります。が、触診能力が優れていれば、使うべきツボはすぐわかります)。
左側も施術します。
緊張(実)には緊張を緩めるように、弛緩(虚)には力をつけるように施術します。
お腹のツボも使います。
お腹にも、大事なツボ、募穴、というツボがあります。
先程の右肝兪なら、期門を診ます。
反応のある方を使います。
このように、鍼灸治療をの理論を使いながら、優れた触診能力で使うべきツボを見つけて、そこに鍼や灸をすると、見事に背中の左右差を整えることができます。
こういうような「中枢と末梢は連動している」「体の歪みが不快症状の原因」といった概念自体が現代西洋医学にはありませんので、対処のしようがない症例が後を絶たないのです。
もちろん現代西洋医学にも優れたところは沢山ありますので、本当は両者補い合う医療が理想です。
現実的には、実現にはほど遠い現状で、今後も実現しないでしょう。
が、実は、全国の多くの大学病院で鍼灸治療は行われています。
ただ、その鍼灸治療も、整体的な概念が欠如している場合がほとんどですので、まずは、多くの鍼灸師が整体的概念、いわゆる「バイオメカニクス生理学」、とでも言うべき概念を取り入れて施術すれば、もっと治療成績は向上し、不快症状でお悩みの方のお役に立てると考えております。
伝統的鍼灸医学に、動的、バイオメカニクス的視点を取り入れた鍼灸は、はっきり行って無敵です。
理学療法士さんのおしいところは、非常にバイオメカニクス的、動的視点に長けていて、私(院長)もその視方をかなり参考にさせていただいておりますが、いざ施術となると、決定打に欠ける、と言わざるを得ないところです。
鍼灸マッサージ師は理学療法をしてもよいが、理学療法士は鍼灸治療はしてはいけない。
鍼灸マッサージ師で本当に良かった、と思うのです。