骨盤は仙腸関節を介して腰仙椎と連結しており、骨盤の回転運動は腰椎部の関節運動にも影響します。
このような骨盤と腰椎と運動学的な連動した動きを「腰椎骨盤リズム」といいます。
立位姿勢での骨盤前傾は腰椎伸展(腰椎前弯増大)、骨盤後傾は腰椎屈曲(腰椎前弯減少)という連動性があります。
腰椎骨盤リズムは、立位時だけでなく、歩行時やランニング時にも機能します。
ですので、歩行やランニングで腰痛を発生させる原因が、この腰椎骨盤リズムと関係していることがあります。
ランニング障害に関連する要因の一つに、「過剰な骨盤運動」があります。
その代表例が、ランニング中の過度な骨盤前傾があります。
ランニング動作における過度な骨盤前傾は、腰椎骨盤リズムに従って過度な腰椎前弯の増大を招きます。
過度な腰椎前弯の状態で、繰り返し回旋が加わると、腰椎後方の椎間関節にインピンジメントを引き起こし、腰痛をきたすこととなるのです。
この現象と腸腰筋の短縮は密接に関係していて、腸腰筋の短縮がある、つまり、股関節伸展可動域の柔軟性が乏しい場合、足趾離地時に立脚側の足部をできるだけ後方に配置して速く走ろうとする時に、過度な骨盤前傾運動で代償することになり、過度な腰椎前弯の増大を招き、腰痛を発生させるのです。
さらに、腸腰筋の短縮により生じた過度な骨盤前傾があると、足部接地の瞬間に過度な股関節屈曲を伴いやすく、坐骨結節も後上方に位置した肢位であることから、坐骨結節に起始するハムストリングが伸長され、ハムストリングの肉離れや疲労を招きやすくなります。
また、ランニング動作時の水平面での骨盤回旋についても、腰痛を呈する者は、腰痛がない者に比べ、骨盤回旋角度が大きい(過度な骨盤回旋)ことがわかっています。
歩行速度を速くするには、胸郭と骨盤の逆方向の回旋によるねじれを抑える必要があります。
当然、ランニングにおいても同様のことがいえます。
このように、歩行速度、ランニング速度の向上には、下肢だけでなく「体幹部」が強く関係します。
体幹トレーニングによって、体幹部を鍛えることは、ランニング速度の向上と障害予防に大切である、ということがいえるのです。
https://youtu.be/e0DxTF0i3VU