日常臨床において「倦怠感」を訴える患者さんは多い。
そして、その多くは、食欲が良好あるいは亢進し、甘味を欲して肥満傾向にある。
過労と飽食の時代の現代社会においては、このような気虚が多くを占める。
これが、「肝気虚」である。
現代の気虚「肝気虚」の症候には、以下のような特徴がある。
①身体的には「だるさ」で表現されるような全身倦怠感が主である。
②精神的には、「やる気が出ない」で表現されるような覇気の欠如が主である。
③朝の寝起きが辛く困難である。
④食欲は良好あるいはむしろ亢進し、間食、特に甘味(精製炭水化物)を欲する。
肝気虚の倦怠は、天の陽気が立ち起こってくるべき早朝に顕著に現れ、朝起床するのが身体的に辛い、という特徴的な症状がみられる。
脾気虚では、朝食が食べられないが、肝気虚では、なんとか起床した後では朝食は比較的よく食べられる。
精神的には、肝気虚では、やる気や覇気の欠如が認められる。
大小さまざまな問題の処理を求められるのが、仕事や学業の場だが、肝気虚ではこれを処理するための思考が衰えて問題を前にして気持ちが萎えてしまうのである。
これは、「頭の疲労」ということができる。
「病気は脳がつくっていた」の田中一医師の「頭でっかち」がこれにあたるだろうか?
疲れて徐々に頭が巡らなくなるのは「虚証」である。
気虚に多く、頭部に気血が回らない状態である。
同じ「疲労」という言葉を使っても、人生を肯定できない、現状が不満、などからくる疲労は質的に異なる。
私はこうあるべきだ、という理想・願望からの乖離が生んだ疲労というべきものがそれだ。
食事に気を付け、睡眠も十分、運動もしている、でも疲労がとれない。
いわば、思考のあり方、現状の捉え方に問題がある。
不満を長く持つと、肝気鬱から肝気虚の疲労へと流れゆく。
有体に言えば、現状がつらいのである。
この、「頭でっかち」からくる疲労が、「肝気虚」の疲労といえそうだ。