脳脊髄液減少症は、通常頚部外傷などの物理的外力により発症することが多いですが、近年では、髄液漏出を伴わない「特発性脳脊髄液減少症」の存在も示唆されています。
この病気は、これといった物理的外力なしに発症することが多く、髄液漏出も伴わないため、正に原因不明で、髄液漏出が伴わないということは、頼みの綱のブラッドパッチも効かない、ということになります。
髄液漏出がなくても髄液圧が減少するということは、一日に500ml程度産生されるという脳脊髄液の産生が減少しているか、もしくは、脳脊髄液の排出が産生を上回り、常に脳脊髄液の量が足りていない状態になる、などが考えられるでしょう。
また、脳脊髄液の量自体は正常でも、その循環環境に問題が起これば、これまた脳脊髄液減少症の症状が出るかもしれません。
ところで、脳脊髄液の循環と連動して、かすかに頭蓋骨と仙骨は動いていますが、硬膜の緊張や頭蓋骨と仙骨自体の緊張・不正により、頭蓋骨と仙骨のかすかな動きに制限が起こり、それと連動して脳脊髄液の循環の不全状態が起こり、様々な不快症状が起こる、と、徒手療法の世界では考えられています。
鍼灸治療により、自律神経失調症状が改善する現実は、この脳脊髄液の循環の改善により、脳幹機能が改善されるというメカニズムにより起こるのではないか?と、私は仮説を立てています。
この仮説が正しいとすれば、この原因不明の特発性脳脊髄液減少症にも、鍼灸治療は効果があるのではないか?と考えています。