インピンジメント症候群、という、肩関節の障害があります。
これは、OKでも多く見かけるもので、肩峰と上腕骨の間に挟まっているローテーターカフがこすれて炎症が起こり、痛みが起こるとともに、肩関節ROM傷害を起こすものです。
これは、肩甲骨の動きが悪い中、肩関節を無理やり動かすことで起こる代表的な障害です。
この場合、肩関節の可動域に合わせて、肩甲骨が動くようになると、自然と肩関節も無理なく楽に動くようになり、インピンジメント症候群の痛みも解消されます。
ここで、注意しなければならないのは、肩甲骨周りの筋肉をほぐして動くようにした、というだけになることです。
人間の身体は、各部位が、すべて連動していますので、人本来の動きを3Dで捉えて、全身の中での肩甲骨、肩関節、という見方をしていかなければなりません。
肩甲骨と肩関節を診る場合、まず近い部位として、胸椎、を診なければなりません。
胸椎はモビリティージョイントで、胸椎にきちんと回旋の動きが出ることによって、肩甲骨が動きながら固定され、肩関節が動くことが重要です。
次に、近い部位として、腰椎、があります。
腰椎は、スタビリティージョイントで、動かず固定されなければなりません。
腰椎(スタビリティージョイント)を体幹で固定すると、胸椎(モビリティージョイント)をねじることができ、胸椎が動くと、肩甲骨(スタビリティージョイント)を固めて土台をつくり、それにより、肩関節(モビリティージョイント)が、機能的に動くことができるのです。
このように、肩甲骨の動きは、胸椎、腰椎と連動していて、それらの動かし方も肩関節に影響を及ぼします。
ただし、体幹は、ただ固めればいいというものではなく、胸椎を動かしながら固定するために、固まる必要があるのです。
ですので、究極的には、腰椎も、固めながら動く、という動作が必要になります。
これは、どの関節にもいえることで、肩関節、肩甲骨、胸椎、腰椎、さらには、もっと末梢の部位の関節にいたるまで、固めながら動く、という、モビリティーとスタビリティーを、各関節が備え、十分に機能し、それらが総合的に連動することで、人間の動作をスムーズに痛みなく行うことができます。
どんな障害を診る時でも、このように、人間を、重力下に存在する立体構造として、3Dで捉え、各部位の連動性を全体として診ていく視点が、非常に重要になります。
この、全体の連動性を診る、テクニックが上達すればするほど、治療成績も上がるものと信じています。
そのためには、日々の努力と感性が欠かせない、と考えています。