肩関節のインピンジメント症候群は、よく遭遇する肩障害の一つです。
肩関節のインピンジメント症候群は、さらに分類すると、関節外インピンジメント、と、関節内インピンジメント、に分けられます。
関節外インピンジメントは、さらに、肩峰下インピンジメント、と、烏口下インピンジメント、に、関節内インピンジメントは、後上方インピンジメント、と、前上方インピンジメント、に分けられます。
この中でも、非常に遭遇率が高いと思われる、肩峰下インピンジメントは、上方の、烏口肩峰アーチと肩鎖関節と、下方の、上腕骨頭、大結節で形成される、subacrominal spaceと呼ばれる空間で、肩関節の運動の際に、この空間を形成する、肩峰の前下縁と、この空間の中に存在する、腱板、が衝突する、という現象から発生する、肩関節障害です。
この障害の要因として、肩甲上腕関節の運動において、上腕骨頭と関節窩との適合を維持し、三角筋とともに、上腕骨の円滑な軌道を生み出すための、フォースカップル、を形成している、腱板、の機能低下により、このフォースカップルの破綻が生じ、上腕骨頭が関節窩に対し、求心位を保つことができず、上腕骨頭が上方への移動を増大させることで、先の衝突が生じることになります。
さらに、この要因を辿っていくと、肩甲骨の運動および位置の異常に行き着きます。
肩の屈曲や外転の際に、肩甲骨が上方回旋や後傾することで、スムーズな挙上が可能になりますが、肩峰下インピンジメントの患者さんでは、この肩甲骨の運動が減少します。
その結果、十分なsubacrominal spaceが得られず先の衝突が起こってしまいます。
さらに、その要因を、辿っていくと、姿勢不良、に行き着きます。
胸椎後湾は、安静時に肩甲骨の挙上と前傾を増加させます。
さらに、肩関節挙上時に、肩甲骨の上方回旋と後傾を減少させ、肩甲骨の挙上制限をもたらします。
その結果、肩甲上腕関節の運動に影響を与え、インピンジメントが起こりやすくなるのです。
胸椎後湾は、もちろん胸椎単独で起こっている問題ではなく、頚椎、腰椎、骨盤、をはじめ、全身性の姿勢不良の一部ですので、やはり、インピンジメント症候群の対策としても、全身バランスを診て、全身の姿勢不良の改善を目指しながら、局所も同時に、詳しく診ていく、という、木を見てなおかつ森を見る、というスタンスが必要となるのです。