めまい患者さんにおける自律神経機能は、副交感神経系が実質的に低下し、交感神経系が相対的に興奮するとともに反応性が低下しています。
この相対的な交感神経系の興奮により、上頚神経節などからカテコールアミン類の分泌が促進され、心血管系や椎骨脳底動脈系に作用し、中枢神経系の血流や神経活動性の左右差を導き、めまいが引き起こされる、と考えられています。
ちなみに、前庭系機能と頚部筋群の緊張とは密接な関係がありますので、めまい患者さんでは、頚部筋の緊張の左右差が必ずあります。
これら、めまいの病態生理を理解すれば、自ずと治療方針が立ってきます。
すなわち、自律神経機能的には、副交感神経系機能の促進、交感神経系機能の抑制、そして、頚部筋筋緊張の左右差改善、です。
これらは、どれも鍼灸治療が得意とするところで、だからこうした、自律神経機能の不調からくるめまいに対して、鍼灸治療が有効、ということがいえるのです。
逆に、末梢前庭機能改善作用を有する薬物が、こうしためまいにはほとんど効果がない理由も同時に理解できます。