閉経後の女性に多い、骨粗しょう症は、大腿骨骨折や、脊椎椎体骨折、などの原因になることがあります。
骨粗しょう症による椎体骨折は、決してまれな疾患ではなく、日本人女性の場合、60代では8~13%、70代では30~40%の方が経験しているといわれています。
椎体骨折の骨癒合率は、一般には良好ですが、約10%強が、偽関節、という、慢性的な痛みを残す後遺症的な状態になるといわれています。
さて、骨粗しょう症による痛みには、このような、椎体骨折にともなう痛み、と、骨粗しょう症自体による痛み、があります。
閉経後は、閉経前と比べて、痛みの感受性が増強する、といわれています。
この原因は、2種類あり、ひとつは、女性ホルモンの産生が低下すると、痛みに関連するタンパクである、cーFosという物質の産生が亢進するためです。
もう一つは、骨粗しょう症は、骨吸収が亢進している状態ですが、この状態では、活性化した破骨細胞により、痛みに関係するカプサイシン受容体(TRPV1)陽性神経線維が活性化し、痛みを出現させます。
要するに、骨粗しょう症になると、痛みを感じやすくなる、ということです。
さらに、骨粗しょう症による椎体骨折後の脊柱変形に伴い、腰や背中が痛くなりやすいですが、これは、脊柱の後湾変形による脊柱起立筋の萎縮が基盤となり、起立や歩行時に、脊柱がさらに前傾になることにより、脊柱起立筋の筋内圧上昇(コンパートメント症候群)となることが原因です。
脊柱起立筋の筋内圧が上昇すると、筋血流の減少が持続的に起こり、筋由来の痛みを発生させるのです。
このため、骨粗しょう症による椎体骨折を経験した方は、腰痛性間欠跛行、といって、腰が痛いために長く歩けない、という状態になりやすいのです。
OKにも、骨粗しょう症によるものと思われる、背中や腰の痛みで来院される高齢女性がおられますが、結論的に、この、骨粗しょう症による痛みと思われる痛みに、鍼灸治療は有効です。
脊柱起立筋に鍼をすることで、筋内圧の減少、筋血流の上昇、が起こり、脊柱起立筋の筋由来の痛みが減少するとともに、神経ー筋機能が促通され、背骨の支え力がアップするかたちとなり、背骨由来の痛みも減少し、さらには、中枢性に痛みの抑制系を発動させることにより、末梢および中枢で、トータル的に、痛みを抑制することが可能です。
背中が丸くなった高齢女性の腰背部痛は多いと思われます。
鍼灸治療は非常に有効かつ安全な治療法ですので、お心当たりの方が、身近におられる方は、是非、OKでの鍼灸治療をお試しください。