昨日、左膝痛で2回目の来院の方の施術で、経穴(いわゆるツボ)は、静的および動的アライメント修正ポイントであることを確信しました。
一回目の施術で、かなり良くなっていたのですが、まず仰臥位で静的アライメントを観察すると、左大腿が内旋、左下腿が外旋し、大腿脛骨関節部(いわゆる膝関節)でねじれを起こしているのがわかりました。
左鼠径部(ツボでいうと衝門~髀関)タイトネス(+)。
大腿に対する下腿の後方へのモビリティも健側(右)と比べると減少していました。
伏臥位では、仰臥位のアライメントを反映して、左大腿骨大転子が後方へ、それと連動して左寛骨がPI変位(後下方変位)し、腰椎は左回旋し、大腸兪というツボは左実(タイト)右虚(スティフネス)でした。
動的アライメントでは、関節の可動性を診ますが、左足関節底屈制限(健側に対し)が見られました。
施術は、これらの静的・動的アライメント修正が主目的となります。
鼠径部タイトネスを、股関節局所のアプローチではなく、衝門が属する経絡:脾経、と、髀関が属する経絡:胃経の中枢および末梢の経穴で実の反応のある経穴に鍼をします。
これにより、鼠径部タイトネスが消失するとともに、大腿骨と下腿のねじれも減少、あとは局所関節モビリゼーションでより正しい位置に修正しました。
伏臥位でのアプローチは、色々なアプローチ方法が浮かびますが、まずは、左寛骨AS(前上方)モビリゼーションを行いました。
それで、先の異常所見はほぼ消失しました。
ここで、患者さんに具合を確認してもらいました。
ほとんど痛み&違和感は消失していましたが、完全にしゃがむと左ふくらはぎに張った感じがあるとのこと。
左足関節底屈制限を解除するため、足付近を触診、経絡も考慮し、左太衝、左束骨に鍼をして、可動域を正常にしました。
これで、先の左ふくらはぎの張り感消失、全く問題ない状態となる。
当然、静的・動的アライメント不良も調整されている。
このように、静的・動的アライメント修正に、経絡を意識した経穴(ツボ)への施術は非常に有効です。
逆に言えば、経穴(ツボ)は、静的・動的アライメント修正ポイントである、ということが確信できました。
こういうような考え方を元にした鍼灸治療を「動的鍼灸」と言います。
向野先生のM-テスト、溝口先生のダイナミック・ロトセラピー、篠原先生の経筋治療、木戸先生のVAMFIT、その他、諸々の先生方が、この事実に気付いていて、それぞれの治療法を開発しておられます。
経絡は、経穴の縦の繋がりを想定したものですが、人体には、縦系だけでなく、横系の繋がり、さらには、あらゆる部位同士の繋がりがあります。
最近では、これを「筋膜」で説明することが大流行です。
が、古来より伝わる中国伝統医学である鍼灸医学には、数千年前より既にこれらの概念は包括されている、と考えられます。
最新の、誰も考えついていないことを考え付いた!と思ったところで、所詮いわゆる「お釈迦様の手の上」なのです。
自分が思いついた、ひらめいた、と思っても、自分でも考え付いたことなら既に過去に気が付いた人がいるだろう、と考える謙虚さが必要です。
これからも登場するであろう様々な治療アプローチ方法、施術方法も、既にすっと以前から存在する方法を発掘したに過ぎないでしょう。
そう考えると、自らの名前を冠した「〇〇式」とか超ダサいことがわかるでしょう。
ということは、より良い治療成績を上げたいのであれば、いわゆる古典に帰ることです(素問・霊枢・難経だけが古典とは想定していません、念のため)。
先人の知恵を拝借して、自分で臨床で確認しながら一つ一つ階段を上がっていくしかありません。
が、人生は多くのことを成し遂げるにはあまりにも短い。
自分のやりたい方向、向いていること、に焦点を合わせて邁進することが求められるでしょう。