オステオパシーという手技体系の中で「内臓マニピュレーション」というものがあります。
動きの悪くなった内臓を直接的にゆるめることで、その内臓の機能アップを狙ったり、一見その内臓とは関係なさそうな部位の凝り痛みなどを改善させる療法です。
この内臓マニピュレーションにヒントを得て、必要と判断した場合、胃・肝臓・膵臓あたり周辺の外側の肋骨や筋肉の硬くなっているのをゆるめる、ということもするようになってきています。
元々、中国伝統医学である鍼灸医学では、五臓六腑といっていわゆる内臓を最優先で重視します。
内臓と体壁、内側と外側は連動している、という考え方です。
この考え方は、現代医学領域でも、「内臓ー体性反射」といわれ、内臓に異常があると神経連絡からその周囲の外側の筋肉や骨格にも異常が出る、と証明されている現象です。
また逆に、体の外側の筋肉や骨格が硬くなったりする異常が起こると、そのエリアと神経連絡のある内臓の機能にも影響を与えます。
この現象は、現代医学的には「体性ー内臓反射」や「体性ー自律神経反射」といわれ、体の外側にアプローチして内臓機能や自律神経機能を改善させる鍼灸マッサージ整体施術の理論的根拠となっています。
鍼灸医学では、いわゆるその臓器と関係がある大事な「ツボ」がその臓器周辺に存在します。
古来より体の内側と外側はつながっている、体の外側からの刺激で体の内側である内臓機能を調節できる、と見抜いていたのです。
とにかく、たとえば肝臓周辺の右肋骨や筋肉が硬くなっている人は意外に多く、そこを鍼や手技でゆるめることでたとえば首が楽になったりします。
ということは、その首の痛みなどの異常が、肝臓の(たとえ数値に現れていないとしても)機能異常からきている、という仮説は成り立ちます。
実際、鍼灸医学では、運動時の痛みは外側の「経絡」の影響と考えますが、じっとしていても痛いという痛みは臓器からきている、と考えます。
そういった視点を参考にして、患者さんの訴える凝り痛みが、動いた時だけに痛いのか、それともじっとしていてもずっと凝り痛むのか、をまずは分別し、それを参考に時に内臓周辺の組織にアプローチする必要があると感じた場合にそういったアプローチも取り入れて施術しています。
実際、施術してすぐ良くなる人と、なかなか施術に反応しない人の差は、この内臓の数値に現れない機能異常が関係しているのではないかと疑っています。
ですので、たとえ主訴が体の凝り痛みの場合でも、なかなか良くならない人の場合、内臓機能も考慮した施術をすることで治療成績が上がるのではないか、と最近やっと気づいたところです。
そもそも、これは内臓・自律神経機能の施術、これは凝り痛みの施術、と分けて考えないところが鍼灸医学やオステオパシー医学の現代医学的にはない優れたところだと考えています。
私(院長)は局所治療は絶対に必要と考えていますが、それだけでは効果が出ない場合も多々あることもまた多くの経験から知っておりますので、やはり全体治療が必要である、と改めて感じております。